【東大生に聞いた】心理学で社会に貢献【東大文学部社会心理学専修】

地方高校生に、追い風を

東大生へのインタビュー企画文学部編、最終回は社会心理学を学ぶ3年生Yさんへのインタビューです!

文学部で扱われる学問の中では比較的理系寄りである社会心理学。心理学の一分野ではありますが、よく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回のインタビューでは、社会心理学専修に所属するYさんが、社会心理学の特徴や魅力について詳しく教えてくれました!

【プロフィール】※情報はインタビュー時のものです
・名前:Yさん
・学年:学部3年
・学部・学科(専修):文学部・社会心理学専修
・出身:東京都・開成高校


社会心理学専修で学んでいること

── Yさんが専修で学んでいることを教えてください。

社会心理学を勉強しています。

社会心理学とは、個人が他者や集団をどのように認知しているか、集団がどういった行動を取りやすいか、といった社会的場面に焦点を当てた心理学のことです。

今は、集団規範がどのように生まれて、維持されるのかというプロセスについて重点的に学んでいます。

── 具体的に言うと?

たとえば、「多元的無知」という現象があります。
飲み会で「自分は楽しくはないが、他のみんなは楽しいと感じているのだろう」ということを、そこにいる全員が考えている。
このように、本来みんなに支持されていない規範が、結果として維持される現象を多元的無知と言います。この規範がどのように生まれ、維持され、解消されるのかということを学んでいます。

── 学部全体だとどんな勉強をしていますか?

社会的場面での意思決定などを扱っています。対人関係の中で、どのように他の人の心情を感じ取って自分の行動を選択するのか、などがその例です。

── Yさんが今後個人的に勉強したいことはありますか?

集団関係、対人関係の心理学の基礎的なメカニズムをもとに、実生活の様々な場面やシステムで応用していくことに興味があります。

── 基礎を勉強するというよりは、社会への応用というイメージですね。


防災でも政治でも。社会を動かす心理学

──  実際にYさんが学んでいることは、社会にどのように活用されていると感じますか? 今後の展望などもあれば教えてください。

今後の展望的なところで言うと、僕が興味があるのは、災害分野での働きかけです。

たとえば、災害の対策というと、ダムや堤防の建築といったものを想像する人が多いと思います。でも実は、避難誘導の言葉を工夫するだけでも、人の心理を動かすことができるんですよね。

── なるほど。具体例を教えてもらってもいいですか?

明らかにおかしいことが起こっているのに、「大丈夫、正常だ」というバイアスがかかって動けなくなってしまう、といった心理現象があります。

このような現象を「正常性バイアス」というんですが、避難誘導の言葉遣いや、避難指示の制度設計といった工夫をすることで、このような現象を防ぐことも可能です。

小さな働きかけで、多くの人の命を救える可能性があるのが興味深いなと感じています。

── 災害分野以外では、どのようなものがありますか?

公共的な社会システムに応用したものとして、同調圧力を利用したイギリスの事例があります。

納税を滞納している人に催促の通知を出すときに、「この手紙が届いた10人中9人は期限通り納税しています」と一言付け加えるだけで、納税率が上がったようです。

設備などのシステム設計にはお金がかかります。一方で、この一文を加えるだけなら、そのインク代しかかからないのに、大きな効果が出る。

このように、心理メカニズムを踏まえた働きかけによって、できることが色々あるのではないかと思っています。

── ありがとうございます。心理面への働きかけで社会を動かせるというのは面白いですね。


研究の成果が社会に直結。心理学の魅力

── ここまでは、現在勉強していることや今後の展望について話してもらいましたが、Yさんは、社会心理学のどんな点に対して魅力を感じていますか?

実社会との結びつきが強いところが好きです。僕は文学部ではありますが、文学や歴史学といった学問よりは、実社会に結びつく働きかけなどに興味があるので、その点で自分に合っているなと感じます。

また、心理学は発展途上な学問なので、研究する余地が多く残されていて、やりがいがあるのも魅力です。

── 心理学といえば、心理テストや、TV番組で見るような、人の心を読んだり操ったりするものを思い浮かべる人が多いですよね。

そうですね。その辺は学問的な心理学とは違ったエンターテインメントなんですが、学問的なものだと思われていることも多いですね(笑)。

学問的なところだと、カウンセリングのイメージもあるかと思いますが、こちらは臨床心理学という分野で、心理学や社会心理学とは別物になりますね。

── どちらかと言えば、人間対人間のアプローチというイメージを持つ人が多いのかなという印象です。心理学を社会にどう役立てるかというのは、普通の人はあまり知らない、新しい観点なのではないでしょうか。


様々な学問との結びつき

── 社会心理学と関連がありそうな他の学問があれば教えてください。

やはり、心理学の領域に含まれる学問とは関連が深いと思います。

社会心理学は、人や集団の繋がりといった社会的場面が対象ですが、認知心理学だと、触覚や味覚などの感覚、時間感覚や平衡感覚など、もっと生物学的な事象も扱います。そう考えると、脳科学も密接に関わってきます。

また、教育にどう心理学を活用していくかを考える教育心理学や、カウンセリングのような臨床心理学も関連があります。

── 心理学系以外では?

進化論の観点から心理現象を説明する進化心理学が最近流行っているので、進化生物学も関連していますね。

また、行動経済学は「経済」ですが、人間が周囲の環境に応じてどう行動するかということを学ぶので、社会心理学と密接な関係にあります。

── 消費者心理などですね。心理学と一括りで言っても、脳科学のような理系的なものから、経済学といった文系の学問まで幅広くカバーしているのですね。


高校生のうちに学ぶべきこととは

──  大学で心理学を学びたいと思っている高校生が学んでおいた方がいいことや、高校の勉強で心理学と関連が深いものはありますか。

高校で心理学などは学んでこなかったと思うので、あまり思いつきませんね……。

強いて言えば、心理学では実験のデータを取り、統計的に解析をするのが一連の流れなので、論文を読むにも、自分で研究をするにも、統計の知識が必要です。僕はそれをサボったので、大学に入ってから苦労しました(笑)。

また、先ほど言ったように進化的な観点が心理学では大事になるので、生物で進化の授業があれば、真面目に受けておくと、後から繋がりに気付いて「なるほど ! 」と感じると思います。

── 意外と理系寄りですね。統計は今までの話であまり出てきていませんでしたが、大学に入ってから勉強したのですか?

前期課程では統計の授業があるんですが、僕は取っていませんでした。

後期課程でも入門から教えてくれる授業がありますが、なかなか奥が深くスピードも早いので、苦手だと理解が大変です。

── なるほど、早い段階から統計に触れておくと有利になるかもしれませんね。もちろん、統計は心理以外にも、経済など幅広い分野で使えますからね。


社会心理学の世界に踏み込むまで

── 続いては、Yさんの進路選択について聞いていきたいと思います。まず、高校時代には、どのようにして大学や科類を選びましたか?

正直、選んだという感じではなかったですね。進学選択制度があるのは知っていましたが、元々やりたいことがほとんどありませんでした。

僕は浪人しているんですが、1年目は何も考えずに何となくで文二を受けました(笑)。流石に一度落ちた後はもう少し考えて、法や経済にはあまり興味がなかったので、文三を選びました。

── 文一が法学で文二が経済という大まかな区分けはありますからね。Yさんは開成高校出身ですが、東大を目指すことに関してのハードルはありましたか?

そうですね……周りにも東大志望者はたくさんいたので、正直に言えばあまりありませんでした。

── さすが進学校ですね。法と経済に興味がなかったと言っていましたが、高校時代はどんな学問に興味がありましたか?

社会学には少し興味がありました。社会問題に関心があったので、そういうものを扱うなら、ジェンダーなどで何かと話題な社会学かなと。特に、ジェンダーを含めた家族の役割について興味がありました。

── 大学入学後、今の学科を選んだきっかけなどはありますか?

前期教養のときから、心理系の授業は面白いと思っていました。進化に関する心理学を扱う「適応行動論」や、社会心理学を扱う「社会行動論」が特に印象に残ってます。

── 大学の授業が決め手になったんですね。

はい。また、社会学にも興味があったのですが、人文的な、いわゆるデータを重視しない研究は個人的には好きではなくて。統計を用いて客観的に分析する社会心理学が自分に合っていました。

── 科学的で、少し理系の要素があるところに惹かれたということですね。社会心理学には理系出身の人も多いんですか?

社会心理学は心理学の領域では文系に近い学問ではあるので、文系出身の方が多いですね。

ただ、統計を扱う分、文学部の中では間違いなく理系寄りです。僕の学年は偶然全員文系出身ですが、例年は理系から進学する人も何人かいるようです。

── 所属する専修の魅力などを教えてください。

同期が約20人、教授も5人と多くないので、教授や同期たちと密に関わることができます。

また、同期の人たちが優秀で、同じテーマでも自分とは違う視点で考えていたり、真面目に勉強している人が多かったりと、刺激を受けられる環境だなと感じています。

── 比較的小規模な分、学生間の関係性が深いんですね。

密にディスカッションをしたり、一緒に実験デザインをしたりと、前期課程とは違った雰囲気です。人数が少ない分、一人一人が責任感を感じられたり、自分たちの裁量で色々と議論のテーマを決められたりと、身につくことが多いです。


学んだことを活かせる将来へ

── 次に卒業後の進路について伺いたいと思います。まずYさんは、大学卒業後どのような進路を考えていますか?

未定です(笑)。

まず大学院に進学するか悩んでいて、もし進学するとすれば、社会システムの実装など、社会心理をどのように応用するかに着目した研究をしたいと思ってます。

就職するにしても、何らかの場面で心理学を生かしたいですね。

なんとなくですが、国家公務員として社会システムに直接関わることや、消費者心理などを学び、マーケティングに携わることに興味あります。

── 自分が大学で学んだことが役立つような環境で働きたいと考えているんですね。社会心理学専修の人たちは、一般的にどんな進路に進むことが多いんでしょうか。

大学院に行く人は少なめですね。去年は20人中2人、多くても4、5人くらいだったと思います。就職については、業界などはあまり詳しく知りませんが、民間就職が多いと言われています。

── 大学院に行く人は意外と少ないんですね。

教育心理など、他の心理学分野では、大学院に行く人が多いところもあります。大学院に行かないと取れない資格がある場合もありますね。


高校生にメッセージ

── 最後に記事を読んでいるであろう高校生に一言お願いします。

僕は今文学部の3年生ですが、自分がどの学部でどんな勉強をしているのか、大学入学前には想像できていませんでした。

自分が何をするのかは、自分がどんなものに触れるのかによって変わってきます。

今のうちからこのような記事を読んでくれるのも嬉しいですし、情報をたくさん集めて、自分のやりたいことをできるだけ固めておくと、役に立つと思います。

ただ、高校生のうちに理解できる情報には限界があり、やりたいことが後から変わることもあるので、気負いすぎず、気楽に自分の進路を考えてください。


全3回の文学部編はここまでです。いかがだったでしょうか?

東大の文学部では、今回の企画で紹介した国文学、西洋史学、社会心理学の他にも多くの学問について学ぶことができます。

詳しく知りたい方は、東大文学部のホームページをご覧ください!

次回のインタビュー企画もお楽しみに!

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