興味を探した先に~農学部推薦入試を経て~

地方高校生に、追い風を

はじめに

こんにちは。
私は、農学部の学校推薦型入試(以下、推薦入試)を経て、現在、教養学部理科二類1年に所属しています。

皆さんは自らの進路・進学先について、どの程度イメージを持っているでしょうか。

ここでは、私のやりたいことが決まる前後から志望校決定、そして大学生活までのプロセスについてご紹介しながら、興味・やりたいことの見つけ方のヒントになり得ることを盛り込んでいます。

この記事が皆さんが進路・進学先を考えるうえでの一助になれば幸いです。

大学入学前から将来のことをキチンと考えておかないといけないの?

進学選択制度のある東京大学の受験を考えている方の中には、このような疑問を持っている方も多いかもしれません。

もちろん、必ずしも高校生の間に将来像が明確化されている必要はないと思います。
しかし、入学前に興味分野が決まっていることのメリットも沢山あります。

たとえば、高校での授業内容は大学での学びと深く関わっているため、興味に即した文理・科目選択を行うことで、将来、役に立つ知識を高校生の間に身に付けることができます。

さらに、東京大学の前期教養課程においても、自分の中に軸があることで、スムーズな授業選択や、勉強へのモチベーション維持ができると感じています。

こちらの記事は主に私の体験に基づいた一例に過ぎないですが、皆さんが将来のことなどを検討する中で、参考にして頂けると嬉しいです。

将来像を確立するまで

まず、将来やりたいことを考え始めてから、それが明確になるまでに辿った軌跡です。

中学生の間は、漠然と理学部や薬学部、農学部などの生物系の学部に進みたいと考えていました。

その後、高校進学前後の新型コロナウイルスによる休校の間にじっくりと考えるなか、興味分野に辿り着きました。そして、地元の大学が主催している高大接続プログラムへの参加を通じ、将来像が確立されていきました。

体験談①〜学校の授業をきっかけに〜

きっかけは中学校3年生の時に受けた生物の授業です。

「根粒菌」を筆頭に様々な微生物が、他の生物が持ち得ないような特殊な機能・役割を活かして縁の下の力持ちで生態系を支えている姿に感銘を受けました。

学校の授業は、大学での学問と密接に繋がっているうえ、幅広い科目に触れるため、興味のあることを探すための絶好の材料になると感じています。

その後、小学生の頃から興味を持っていた環境問題に微生物の機能や生態を活かすことができないか、と考えるようになりました。
キーワードは「微生物」「環境問題」「地球環境」です。

インターネットで「微生物 環境問題」と調べてみると、「環境微生物学」という分野に出会いました。
このように、興味のある単語を検索BOXに打ち込むだけで、有用な情報が沢山得られるのでぜひ、実行してみてください。

次に「環境微生物学」をキーワードに大学の学部や研究室検索を進めるとともに、専門書を読んでみました。この過程の中で、生物系だけではなく工学系の学部でもこの分野を扱っていることが分かりました。

当時はこれ以上深掘りすることは出来ませんでしたが、分野を絞ることで普段からアンテナを張って情報を得やすくなったと感じています。

体験談②~高大接続プログラムに参加して~

次第に科学の世界に触れ、研究のノウハウを学んでみたいと考えるようになりました。

そこで、大阪大学主催のプログラムに参加してみることにしました。私は、本プログラムの2つのコースにそれぞれ半年間~1年間ずつ所属していました。

大学主催のプログラムに関する情報は見つけにくいこともありますが、実は様々な大学が中高生対象のプログラムを実施しています。地元の大学や気になっている大学のホームページから探してみると良いでしょう。

1年目のコースの内容は、講義の聴講や参加者同士のディスカッションレポート作成研究室体験などです。経験者が多い中、当初は議論を聞くだけで精一杯でしたが、徐々に自分から発言できるようになっていきました。

また、講義の内容や学んだこと、興味を持って自主的に調べたことなどをファイルにまとめていました。体裁を整える必要はありませんが、経験を積みながら学んだことや考えたことなどを蓄積することをオススメします。

当コースでの経験を経て、異なる分野同士も多くの接点を持っており、1つの問題に対して複数のアプローチが必要だ、ということを身をもって感じました。

そして、頭の中で思い描いていた研究提案を実践してみたい、という思いから、2年目のコースでは希望の研究室での研究活動を行いました。

このコースでの経験を通じ、得られた次のようなことは、後の東大を志望する過程で非常に重要な要素となりました。

  • 自分が大学で学びたい分野を再確認できた
  • 「環境微生物学」という興味分野から、さらにやりたい具体的な研究テーマを見つけることができた
  • 研究プロセスにおける普遍的な課題に気付いた

経験数は他の推薦生と比較すると少ないですが、与えられた環境でできること、学べることを最大限化することを心がけていました。

推薦生の活動内容の紹介

以上は私の2つの時期における体験談でしたが、こちらでは、他の推薦生が行っていた活動の内容をご紹介します。括弧内は進学先・進学予定先学部です。

以下の一覧の中には、高い行動力が必要な活動やハードルの高い活動も含まれていますし、もちろん、学業や今取り組んでいることが最優先です。

しかし、何らかの行動を起こしてみたいと考えている方は、これを機に興味を持てる活動や自分も取り組めそうと感じた活動を探してみてください。

  • 高校での課題研究、部活での成果を外部発表などで発展(工・農学部)
  • 資格取得へ向け、自主的に勉強(法・経済学部)
  • ホームステイ留学プログラム(農学部)
  • 企画考案を行うプログラム(法学部)
  • イベントスタッフを経験できるプログラム(農学部)
  • 自ら学校に働きかけ、アンケート調査(医学部)
  • 当事者との関わりの場を設け、実態を学ぶ(医学部)
  • 自主的にインタビューを行い、レポートを作成(農学部)
  • 有志団体の運営(工学部)
  • 長期的な観察記録(農学部)

東大志望前後

次に、自分の興味や考えに基づき、大学や学部を決定していくまでのプロセスについてです。

多様な大学へアプローチ

当時、実家のある大阪から通学可能な大学への進学を考えていました。そのため、関西の大学に絞って、自分の取り組みたい研究テーマと近い研究を行っている大学や、ポリシーが私の考えと一致する学部をピックアップしていきました。

しかし、ピンと来る大学・学部が見つからなかったので、具体的な要素の一致を求めるのではなく、自分が今後どのようなスタンスで研究に携わりたいか、を軸にするようにしました。そこで、「生物・化学的観点から環境問題の解決に繋がる研究を行う」ことを基準としました。

再び、実家から通える関西圏の大学について、インターネットの大学・学部・研究室ホームページや大学から取り寄せたパンフレットを読む、という作業を続け、志望先を絞っていきました。
しかし、思わぬきっかけで東京大学の農学部を志望することになりました。

東大を、農学部を目指すことに

あるとき、プログラムでの研究に関するリサーチのため、「大学 応用微生物」というキーワードで検索したところ、検索結果の一番上に表示された研究室が東大農学部所属の研究室でした。

そして、その研究室のホームページのトップに書かれていた文言が、まさに私が微生物に対して抱いていた魅力と全く一致していたことに衝撃を受けました。また、農学部の学部ポリシーも深く共感できるものだったことを、今でも鮮明に覚えています。

このことを機に、東大の農学部教育システムについて情報を集め始めました。その中で、私が他の大学について調べていた際に感じていた物足りなさが全て解消されていきました。

この際、学部カリキュラム研究テーマに基づき、東京大学農学部の応用生命化学・工学専修を進学先の候補としました。

そして、東京大学が一般公開している授業カタログを使って前期課程の授業で学べることを調べ、手元に届いた専修パンフレットを熟読し、ここで学びたい!という気持ちが強くなりました。

さらに、パンフレットの推薦入試案内を通じ、入学直後から専門的な学び・経験に触れることができること、入試には高い実績が絶対条件ではないことを知りました。

後者に対しては半信半疑な上、高校で情報が蓄積されていなかったことや、面接試験が大の苦手だったことから、かなり躊躇していました。しかし、入試要項に載っていた、農学部の求める人材像に自分との共通点を見つけ、自分の活動を何らかの形で活かせるなら挑戦してみよう、という気持ちになりました。

受験スケジュール

私は上記のような過程を経て、高校2年生の秋に東大の理科二類を、同年冬に農学部の推薦入試を志望しました。

そのため、一般入試と推薦入試の対策・準備を両立しなければならず、かなりハードな面もありました。

こちらの記事では受験生活の詳細は省略しますが、私の受験までのスケジュールを画像にて軽く紹介しますので、推薦入試を検討している方は参考にしてください。

大学生活

最後に、現在送っている大学生活についてです。

高校生の頃にある程度将来像を固めたとはいえ、もっと視野を広げ、多方面からのアプローチ方法を考えた上で、取り組みたいテーマを最終決定していきたい、という思いでした。

今年度4月に入学してから4か月しか経っておらず、十分に自分のものにしきれていない部分もありますが、私の大学生活は主に以下の3種類に分類されます。

  • 一般生と同様の前期教養課程での学び
  • 農学部のプログラムへの参加
  • 推薦生の制度を用いた専門的な経験

前期教養課程での学び

皆さんの中には既に知っている方も多いかもしれませんが、理系の1年生は必修科目がかなり多いです。そして、短い期間で膨大な事項を扱うため、負担に感じることもあると思います。

私自身、高校生の頃に受けてみたいと考えていた国際関係や法・制度関連の科目は、まだ履修することができていません。

しかし私は、これまで無縁だった物理系の必修科目と興味分野との新たな接点を見つけました。これらの学問領域を融合させた研究について、論文検索などで深掘りしてみたところ、現在まさに研究が進められているとのことです。

このことを知り、今では微生物学を突き詰めるだけではなく、この分野との融合も視野に入れて、研究を行うことを考えています。

農学部主催のプログラム

私がこの4月から参加しているプログラムは「One Earth Guardians育成プログラム」です。これは、100年後の地球を見据えて、地球上の課題を見出し、考え出した解決策を実践できる人材、「地球医」を育てることを目的としています。

ここでは主に、社会科学的な知見を得ています。特に、企業研修を通じて技術の実用化の際に意識するべきことなどを学ぶ過程で、私の中で新たな検討事項も生まれました。また、「環境倫理」という、複雑ですが、現在・将来の地球上の課題を分析する際に必要となる見方にも触れました。

科学的な研究を進めるなかでも、欠いてはならない視点に気付き、今後の授業選択へ活かせると考えています。プログラムでの活動は始まったばかりですが、新たな体験やメンバーとの議論を通じて、自分の考えを深めていきたいです。

推薦生の制度

推薦入試で入学すると、複数の特有の制度を利用することができます。学部にもよりますが、農学部の場合は以下のような制度があります。

  • 入学直後の研究室訪問:入学直後に複数の研究室を訪問し、農学部の学び・研究に触れる
  • アドバイザー教員制度:今年度は生徒1人に農学部の教授の方1人が配属され、進路や専門的な学びに関する相談を行うことができる
  • 早期履修制度:農学部専門科目の受講及び、単位認定が可能

他学部では、学部主催のゼミへの参加や定期的な研究室訪問などが実施されているそうです。

私は、2つ目のアドバイザー教員制度を利用し、担当教授の研究室で、高校時代の追加研究を行っています。視野を広げると同時に専門性を深めたい、という高校生の時の思いはこのような形で実現しました。

この制度自体は推薦生向けですが、大学の研究室は誰でも訪問することができますし、研究内容などについてお話を伺ったり、実験をすることも可能です。高校生の時に研究室訪問を行い、先生と直接お話して出願学部を決定した方もいらっしゃいました。

中高生の今、大学へ直接足を運ぶことは勇気がいると思いますが、入学後、研究室で研究をしている自分を思い浮かべてみると、合格したい!という気持ちも強まるのではないでしょうか。

おわりに

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございます。この記事を何か行動を起こしてみようと考えるきっかけにして頂ければ幸いです。

今回は書くことができませんでしたが、大小様々な決断を下すまで、多くの紆余曲折がありました。今から振り返ると、別の手段・選択肢もあったのではないかと感じる部分もあります。

また、将来のことを考えるタイミングは大学入学後も沢山あると思います。中高生の今、固まった将来像が変わることもあるでしょう。私も、数年後、別の分野の研究に携わっているかもしれません。

しかし、自分のやりたいこと・将来像は考えれば考えるほど、目の前の受験勉強や大学入学後の勉強に対するモチベーションも上がりますし、自分の世界がどんどん広がっていくことでしょう。

皆さんも隙間時間に情報を集めたり、入学後の自分を想像しながら、勉強を頑張って下さい!不安なことがあれば、FairWindでも随時質問を受け付けていますので、多様な方からのアドバイスを得る機会にしていただければと思います。