【合格体験記】東大推薦入試一問一答【法学部】

地方高校生に追い風を

【合格体験記】東大推薦入試一問一答【法学部】

〜はじめに〜

私は、ご縁をいただいて2019年度の東京大学法学部の推薦入学生となりました。東大の推薦入試については既にメディアなどで様々に語られ、またそこで恐ろしくハイスペックな合格者が紹介され、漠然と「ヤバそう」なんて思っている人が多いだろうと思います。でも、それは所詮マスコミ映えです。私は別にそんなんじゃないです。この話題に興味がある人もない人もまずは軽く読んでいただき、「実際こんな感じなんやなー」と知っていただけたら此れ幸いですし、もし東大の推薦入試に興味を持っていただけたなら本望です。


名前、出身地、出身高校は?

荻原薫、兵庫県神戸市、兵庫県立長田高校(人文数理探究類型)


人文数理探究類型って何?

普通科内に併設されていた学年に一クラスの特色コースで、通常の教育課程に加えて「探究」という研究もどきをやるクラスです。唯一3年間クラス替えがなく、文理混合でした。このクラスに入っていなければ推薦入試を受けることは100%なかったと思います。


推薦入試を受けようと思ったきっかけは?

元々東大を一般で受けるつもりでしたが、3年の10月1日に担任の先生から「チャレンジしてみないか」と打診していただいたのが推薦を視野に入れはじめたきっかけです。ちなみに出願開始が11月1日だったので、今考えても恐ろしくギリギリのタイミングでした。


なぜ打診があった?

その先生曰く、私が出願要件をいい感じに満たしていてかつ法学部の倍率がそこまで高くなかったからだそうです。


「法学部」とのことだが、東大は入学時には学部が決まらないシステムでは?

一般入試はそうですが、推薦入試の場合は学部で入試が分かれていて、3年次以降必ずその学部に進むので出願時に学部を決める必要があります。これはメリットでもありデメリットでもあるので気になる方はGoogleへGO!


なぜ法学部に?

もともとは弁護士になりたくて漠然と法学部を目指していましたが、高校の3年間で政治分野への興味が増したことで明確に法学部に決めました。


出願要件は?

①成績が学年で5%以内

②問題発見&設定能力を持つ

③問題解決に向けてイニシアチブを発揮できる

④異文化交流能力を持つ 

大学側はこの要件を満たすことを証明する資料として、例えば研究論文や留学経験、TOEFL・英検・IELTSなどの検定資格を例示していましたが、これらはあくまで例示であって、満たしている事がわかればいいとしていました。私は上記のようなストレートに書ける資料がなかったのですが、探究や部活動、学校行事でのことで代用しました


具体的に何を資料として出したのか?

②と③について。先ほども少しだけ触れましたが、私は高校時代、探究類型で三年間「探究」という研究活動を行なっていました。具体的な研究内容としては、「阪神淡路大震災発生時における神戸の在日外国人(特に在日ベトナム人)の置かれた状況、日本人との軋轢、そしてその原因について調査・考察し、そこから得られる教訓を元に未来の在日外国人との協力を見据えた災害対策を考える」ということをしていました。この探究がきっかけとなってSGH甲子園という大会にも出場しました。(推薦の書類には書かなかったのですが、この研究が縁となって神戸大学の教授にお誘いをいただき学会へ出させていただいたりもしました。)これについてまとめたポスター、プレゼン資料が②と③への主なアピールポイントとなりました。

読んでいただいて薄々気づかれたとは思いますが、法学部に出願したくせに全く活動内容が法学・政治学系にかすってませんでした。でも、法学部としてはそれについては全く問題なかったようです。募集要項にも、法学・政治学系である必要はないと明記されていました。

また、演劇部で部長を務めていた事、校内の音楽コンクールで3年間クラスのコーラスリーダーを務めた事(実際リーダーのあり方をかなり考えることができて人間的に成長しました)も推薦書に書いていただき、「勉強だけしていたわけじゃないですよ〜」というアピールをしました。

私にとっての問題は④でした。大学側はこの要件を満たすことを証明する資料として、例えば留学経験、TOEFL・英検・IELTSなどの検定資格を例示していました。しかし、私は英語に関する資格を全く持っておらずかなり焦りました。学校の先生と相談して、なんとか高校在学中に参加した英語での短期交流プログラムの参加証明書、そして上記の探究活動の中での外国人や様々な立場の人との交流実績を資料として提出しました。

大学側はあくまで例示であって満たしている事がわかればいいとしていたのでこのようにして乗り切りましたが、おとなしく英語系の活動に力を入れておけばよかった…とは今でも思います。

こう見るとほぼほぼ高校の活動で要件を満たしていたんだなあと改めて感じます。本当にいろんなことをさせてもらった3年間でした。学内活動は割と疎かにしがちな人もいると思いますが、何事も人生経験だと思って挑んだ方が後々自分の役に立ちます。ただ、推薦の同期の友人たちは自主的に様々な研究をしていたり、留学やプロジェクトへ参加するなど学内に限らず様々な活動をしていました。


他の提出物は?

志願理由書として、「①現代社会の中で重要だと思う問題は何か。」「②その問題について将来どのように取り組もうと思っているのか。」「③その他入学後にやりたいことは何か。」の三つのお題に対して合計3000字程の小論文を提出しました。

①については主に長らく興味を持っていた国民国家が抱える問題について書きました。私の要領が非常に悪く、担任の先生には締め切り間際の時期、しかもよりによって遠足の前日に夜11時まで学校に残ってつきっきりで添削をしていただきました。本当に頭が上がりません。終電の1本前で帰宅して翌日の集合にバッチリ寝坊してしまったのは今となってはいい思い出です。


―面接試験の前に書類選考があったとのことだが、通った時の気持ちは?

出願要件④の資料の薄さや、論文がない事がかなりネックだと思っていて、正直落ちるかもしれないという思いが大きかったので本当にびっくりしました。


―面接試験の形式は?

法学部はグループディスカッション(8人で90分)と個別面接(15分)でした。教育学部はポスターセッションだったりと学部によって形式は様々です。待ち時間を含めて試験が半日あったのでグループのメンバーとは1日でだいぶ打ち解け、今でもご飯に行ったりと仲良くしています。


―事前練習はどのように?

グループディスカッションについてはクラスメイトに協力してもらって2日前(!)に一度だけ練習をしましたが、自分の意見や考えをいろいろアピールしようとして空回りしてしまいました。また、面接練習は3回ありました。そのうち1回は(今考えてもなぜなのか本当に謎ですが)なんと校長先生が参加してくださったのですが、相手が元々見知っている先生だということもあっていい格好を見せようとガチガチに肩を張ってしまい、終わった後に尽く泣いてしまうという散々っぷりでした。とても受かる雲行きではなかったです。


―本番ではどのような立て直しを?

グループディスカッションについては反省して色々と調べた上で、本番では「他人が発した意見について、同意や譲歩をしつつ補足をしたり疑問を立て、議論を前進させる」ことに徹しました。あえて自分の意見を強く主張せずに周りを観察しながら発言したのが功を奏しました。また面接については3回の練習の中でいただいたアドバイスをよく読み返した結果、「どうせ緊張するのだし相手は自分よりはるかにすごい教授陣の方々なのだから、自分みたいな一高校生ごときが小賢しく何か話したところで見抜かれてしまうだろう。それならありのままの自分で当たって砕けよう」と吹っ切れた気持ちで挑めました。


個別面接ではどのような質問が?

※同じ法学部推薦のメンバーでもかなり質問されたことが違っていて、一概に参考にはならないと思うのでそのつもりで読んでいただきたいです。

私の場合は、高校時代の活動実績のことよりは志願理由書の①で書いたことに対する質問の方が割合多かったと記憶しています。多分、尖ったことを書いたので教授に食いつかれてしまったのだろうなと思います。「アメリカの分断について話していたけど分断することがどうしてダメなの?」「日本に分断が起こるとしたら何が要因で起こると思う?」など、答えが明確には出せないような抽象的な質問をたくさんされ、瞬時に自分なりに考える力を試されているなと感じました。高校時代の探究活動の中で人前で話す力をつけられたのが、この試験に挑む上で大きかったです。


―筆記試験の有無は?

筆記についてはセンター試験が選考基準に含まれていました。大学側が定めていた基準自体は80%程度以上でしたが、二次試験も受けるつもりで勉強していたので本番は95%弱をとることができました。模試の自己最高から50点上がったので、理科と社会の最後の追い込みの大切さを身にしみて感じました。(ただし英数国は早めにコツコツやっとかないと死にます!)


―受験中辛かったことは?

推薦の試験日が12月15日で合格発表が2月13日、一般の試験日が2月25、26日だったので、合否がわからない状態で一般の勉強をするのがかなりつらかったです。受かっていて欲しいという願望と落ちているかもしれないという不安の狭間で悶々としてしまって、いまいち勉強に集中できていませんでした。

その集中力のなさに自己嫌悪して負のスパイラルへ…。私ほど二次に手が付かない人はいないかもしれませんが、受験する上でそれなりの覚悟は必要だとも思います。


―合格した今、何が合格につながったと感じるか?

一つ感じているのは、少なくとも法学部の推薦入試では「自分なりに考え、伝える力」というものが結構重視されているのだろうなということです。私は昔から一人でぼーっと考え込むのが好きで、探究活動での研究内容もそうだし、先述の志願理由書にも兼ねてから考えていたことを無理に背伸びすることなく正直に書きました。今考えると教科書的でないまあまあお行儀の悪いことを書いていたな…と思いますが、むしろそういう荒削りな考えに教授の皆さんは注目してくださったのかもしれません。

再三にはなりますが、実際、二次選考での個別面接の際には志願理由書に書いたことについてかなり質問されました。またまた再三にはなりますが、この場でされた質問というのも「そんなん誰にもわかるわけないやん…」という掘り下げ方をされたり、かなり抽象的な問いを投げられたりして、瞬時に考えて自分なりに結論を出す力を試されているなと感じました。拾ってもらえた理由として思い当たるのはこの辺りです。

あとは、合格者発表後の大学側の会見で、「受験者の卓越性・多様性・潜在性を見ているが、卓越性ばかりが取り上げられているように感じる」といった趣旨のことを大学の方が仰っていましたが、私はまさしく多様性と潜在性で受かったのだろうなと思います。

卓越性で言えば〇〇オリンピック入賞者や〇〇大会金賞受賞者などが実際に推薦同期にいます。しかし、例えそういった華々しい成績はなくとも、「この人なら何かやってくれそうだ、うちに欲しい」というその『何か』を大学側に感じ取ってもらえたのではないかと今改めて感じていますし、私以外にも「そう思う」と話している推薦生の友人がいます。言語化しづらくて非常にもどかしいですが。そういえば担任の先生は、私が色んな意味でかなりぶっ飛んでいたので「こんな人が東大にひとりぐらいおった方が面白いよね」という観点で推薦書を作成したそうです。


―推薦入試のメリットは?

実際に感じたこととしてはコネクションがかなり強くなるということです。先述の通り法学部はグループディスカッションなので入学前から同じ学部の友人ができますし、上下のつながりもあり、学部を超えた知り合いもたくさんできます。ただ仲良くなるということではなく、経歴豊かで向上心の高い人たちから情報と刺激を身近にもらいながら過ごせるのはとても恵まれた環境なのだなと日々感じています。


推薦入試のデメリットは?

これを書くかは非常に迷ったのですが、せっかくの機会なので書いてしまおうと思います。一般的にはやはり、教養学部での2年間を経て専門学部を決められるという東大の恩恵が少し薄れる点でしょうか。もし明確にやりたいことがないのであれば推薦入試を無理して受ける必要もないと思います。あとは、入学後「私はどうして推薦入試で合格したのだろうか?」と考えてしまうこともないではないということです。こんなこと考えても仕方ないんですがね…(笑)


―読んでいる方々へのメッセージを。

可能性に溢れている皆さんには、先ほども書きましたが推薦入試を考えていてもいなくてもとにかくいろいろなことにチャレンジしてほしいと思います。その踏み出す一歩がいつか回り回って自分の強さになってくれる日が必ず来ます。私は出願の時、過去に模擬国連参加や英語の資格取得、短期留学などを足踏みしてしまったことをとても後悔しました。迷っていることは今すぐにでもやってしまいましょう。進路なんていつどう転ぶかわかりませんから。また、だからこそ、志望大学や憧れの大学が推薦入試をしていれば1年生のうちにその出願要件を調べておくことも重要だと思います。それぞれの大学、学部で出願要件は異なっているし、翌年も同じ出願要件でくるとは限らないから、情報収集は大事です。チャンスは増やせるだけ増やしていきましょう。

そして、周りの人には常に感謝と尊敬を忘れないでください。私は受験を通して、家族はもちろん、私に受験を薦めてくださった担任の先生や数学科の先生、そしてたくさんの先生方、塾の先生方、探究類型のクラスメイトの人たちを含め友人たちに助けてもらい、応援していただき、合格までたどり着けました。決して当たり前のことではないですし、そうしていただけることへの心からの感謝は本当に忘れてはいけないと思います。そして、その当たり前の姿勢が気づかぬうちに回り回って自分への追い風になっているのではないかなというのが今の私の考えです。

また、推薦入試はあくまで本線の入試ではないので、「受かるために準備して受かる」というよりは「何かしらやってきたらそれが評価されて受かる」入試であるということは忘れないでほしいなと思います。そういう意味では一般入試とはちょっと毛色が違います。だから、受かろう!と思わなくて大丈夫です。受かろうと思っているとおそらくどこかで背伸びしてしまう危険がありますし、それはとても勿体無いと思うので。やれるだけのことをやって、チャレンジできそうなら遠慮なくチャレンジしてみてください。受験しようかと足踏みしているそこの皆さん、応援しております!

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