【地方から東大へ】努力で掴み取った東大合格【体験記】

地方高校生に、追い風を

Sさんのノート写真

↑ 高校時代に使っていたノート

東大合格のために「親を超えた」と言われたほど努力を重ねたSさん。英語を好きになるために英語ディベート部へ? 鹿児島県の公立高校から理科二類に合格したSさんのお話です。


はじめに

親元を離れての東大入試を終えて、帰宅した私に、父がかけてくれた言葉は、
「お父さんは、今までのあなたの全ての努力を尊敬する。もう完全に親を超えたね。」
でした。苦労が多いながら自分の手で人生を切り拓いてきた父のことを、私はとても尊敬していましたから、そんな父からのこの言葉はあまりに嬉しいものでした。

中学生の頃から東大入学を夢見ていた私が、高校3年間をどのように過ごし合格を掴んだのか、父にそうまで言われるほどの努力とはどんなものなのか、これから少しお話ししようと思います。


受験勉強開始の1年生

受験勉強のスタートは高校入学と同時に始まります。
というのは嘘で、実は高校「合格」と同時に始まります。

「この高校に入学するのは東大に入るため」と考えていた私は、高校の合格発表の次の日には、地元の高校生向け塾で自習室の利用を始めました。規模は小さいながらも難関大の過去問などを扱うコースに入り、大学合格への布石としました。

塾での学習はあくまで補助的なものでしたので、これ以降はあまり記述しませんが、受験期での過去問演習の添削などをお願いしたり、自習室を積極的に利用したりしていました。

こういうわけで、私の受験勉強の全てを語るには入学直後から受験直前まで全てを語る必要がありますので、ここからは私の高校3年間の勉強の様子を順にお話ししていこうと思います。


英語が苦手なら、英語漬けにしたらいいじゃない?

入学してまず、中学時代足を引っ張りがちだった英語の克服方法を考えました。

私は、半ば強引な方法でこれを成功させました。

それは、「英語ディベート部に入る」ということです。

英語に苦手意識こそあったものの、部活として友達を作りながら英語を話すのは楽しいかもしれないと思い、思い切って入部しました。

結局これは功を奏しました。部活中に英語を話すから語彙が身につくというのはもちろん、英語が得意な友達に負けじと英語の勉強に取り組めました。また、たくさん話しているうちに、英語そのものも好きになれました。

好きになってしまえば学習は苦になりませんから、この後述べるような英語の勉強も楽しみつつ行うことができました。


春夏、基礎固めに全力

1年生の前半は、国英数の基礎固めに取り組みました。

国語では、現代文の精読を行い、文章に対して自分で問いを作るなどの工夫をしていました。

英語については、部活でスピーキングを鍛えつつ、英検準1級取得を目標に単語の暗記をしていました。また、毎日1題は長文読解を行うことを継続しました。

数学については、学校の授業は十分についていけたので、週に一度、自力で既習範囲の難問演習に取り組んでいました。


秋冬、崩れだす学習リズム

秋頃から課題研究活動に取り組み始めました。テーマを決めて社会実験などを行い、論文を書いたり英語で研究内容を発表したりする活動です。

ここで論理的な思考力を身につけられたことは今の大学生活でも役立っていますし、大人数の前で英語のスピーチをすることも英語力の増強には大変有用でした。

ただ、それらの準備に追われ、徐々に授業の予習復習が手薄になっていきます。
授業進度のスピードアップに伴い、数学や物理の成績が低迷する状況を迎えたまま、私は2年生を迎えました……。


立て直しを図る2年生

1年生までで国英の基礎固めをほとんど完成させた一方で、理系科目の成績が低迷し始めた私。2年生になり学校から与えられる課題が増える中で、どうにか成績の立て直しにかかります。

2年生の学習の様子を、教科ごとに振り返ろうと思います。


基礎中の基礎すら分からない物理

1年生当初は得意科目だったはずの物理は、気づいたら完全に分からなくなってしまっていました。慌てて『物理のエッセンス』という基礎的な参考書を買い求め、これと教科書をもとに元に基礎の復習を始めました。

毎授業の後に教科書を読み直し、教科書や「物理のエッセンス」の該当ページの問題で演習。分からないところは次の授業で先生に質問。

これを繰り返しているうちに、なんとか物理は最悪の状況を回避、2年生の冬にはようやく応用問題にも取り組めるくらいには成績も回復しました。この辺りからは『名問の森』を使いながら、繰り返し難問の演習にも取り組むようになりました。


発破をかけられながら取り組む数学

得意なはずだったのにいつの間にか成績が悪くなっていたのは、数学も同じでした。とても目をかけていただいていた担当の先生に
「最近どうした、試験中焦ってるのか? らしくないぞ」
と声をかけられるほど。慌てて先生に泣きつき、試験のたびに発破をかけられながら、基礎の定着に勤しむことになりました。

具体的には、毎週の宿題として課される演習問題だけでなく、課されていない残りの問題も解くということを1年間継続しました。人より少しだけ多く演習を重ねることで、理解に時間のかかる私でも、単元の内容を着実に復習することができたのだと思います。

地道な努力の積み重ねで、数Ⅲが始まる冬には、数学もどうにか成績が安定するようになりました。そこからは数Ⅲをとにかく定着させるべく、基礎的な授業の復習に時間を割く咲くようになりました。


ほとんど完成に近づいていった国語と英語

1年生までで得意科目として確立した国語と英語については、2年生で概ね学習を完成させることができました。

夏に東大の過去問を初めて解き、国語は古文単語や句法の暗記、英語は読解スピードと要約力が必要だと把握しました。その分析をもとに、英語長文読解に加えてその長文を要約することも日課に。要約したものを先生に添削してもらうことで精度を高めようとしました。また、英文を読むスピードに意識を向け始め、徐々に精読から速読へとシフトさせました。

国英が2年生の終わりには「あとは単語をできるだけ詰めるのみ!」となったため、3年生からは、追い込みの効く理科に、それまで使っていた時間を費やせるようになりました。後から振り返って、理系科目の苦手な私にとって、これは功を奏した学習プランだったなと考えています。


追い込みをかけた3年生

あとは理系科目をぐんぐん進めるぞ!という状況で3年生を迎えました。そしてここから学習も本格化します。


生活リズムを強制的に朝型に

3年生からは、朝補習という7時25分からの理科の授業が始まりました。これに伴い、私は強制的に生活を朝型にすることとなりました。

朝は5時起き。高校までは父に車で送ってもらい、車内では東大英語のリスニング。6時に学校に着いたら自習室で1時間半ほど勉強し、そのまま授業を受ける。夕方は放課後すぐに自習室に向かい、21時20分まで勉強する。帰宅し入浴を済ませると、髪を乾かしながら壁に貼った化学の暗記事項を覚える。覚えたら紙をくしゃくしゃに丸めて捨て、また新しい暗記シートを作成、明日の夜に備えて壁に貼る。そうして23時に就寝。

この生活を1年間毎日続けました。もともと朝は苦手だったので最初は慣れずに苦労しましたが、一度慣れてしまうと、眠い夜の時間にペンを持って勉強する必要がないことは有利に働きました。


そしてここで付記しておきますが、私が1年間この生活を続けたということは、1年間母は5時半には弁当を作り上げ、父は5時半に車を出してくれたということです。両親にはとても無理をさせてしまいましたが、一つも文句を言わずに頑張ってくれました。本当に感謝の思いでいっぱいです。


効率のために力を抜くことを覚える

ここまでは、ほとんど全ての教科に力を入れ続けてきましたが、理系教科の追い上げを図るため、国英の学習は3年生から力を抜き始めました。

授業中に当てられた時に答えられるだけの最低限の予習にとどめ(というかほぼ予習をせずに)、授業に臨みました。授業中は必要そうなところだけ先生の話を聞き、それ以外は単語を調べ暗記したり文法事項を確認したりするなどして、自分なりに有用に過ごしました。


いよいよ理科に全振り

こうして国英にかけていた時間が浮いたところで、それを理科に注ぎ込むこととなります。物理化学に関しては「重要問題集」の問題を基礎→標準→応用と螺旋式に解いて、分からないところを休み時間で学校の先生に質問しまくりました

昼休みの時間は10分ほどのこともままありました。昼休みを返上してまで私の質問に付き合ってくださった先生方には、本当に感謝しています。

こういうことを秋頃までジリジリと繰り返し、秋にはどうにかセンター試験レベルまでならどんとこい!という状態になりました。

一方で、理科については、二次試験対策をほとんどせずに秋までを過ごしてしまいましたから、秋の冠模試の判定は壊滅的です。しかし、「私はまず基礎固めが先決だったんだ!今からでもまだまだ成績は上がる!」と信じて、前向きに二次試験対策を始めました。


先生と二人三脚の数学

数学についても、3年生になってからは先生の力を大いにお借りしました。

授業で習う数Ⅲの復習は自分で行いながら、担当の先生に依頼して東大の過去問添削を始めました。これを通して、解答の書き方や発想力を鍛えられました。回数を重ねるごとに解答が洗練されていき、ペースは遅いながらも二次試験に向けて準備を整えていきました。

Sさんの数学のノート。先生から添削を受けていた様子がわかる。

センター試験を終え、二次試験対策へ

秋までで全ての教科において標準レベルを固められたため、センター試験対策はほとんど必要ありませんでした。試験直前の2週間で一気に暗記事項を叩き込んだりスピードをつけたりして、本番でも納得のいく点数を取り安心して二次試験対策に移りました。

全教科において先生に協力していただきながら過去問添削を続け、本番を想定した時間感覚で問題が解けるよう訓練を重ねました。

二次試験対策にかけた時間がおそらく人より少なかったため、試験前日もガッツリ勉強していた私。勉強していた方が焦る気持ちもなくなる、という思いもありました。そのおかげで、当日は「やり切った!もうこれ以上は勉強できない!」という達成感のもと、試験会場に向かうことができました。


3年間の振り返り

以上が、私の3年間の受験勉強の様子になります。

2年生の夏までで成績を上げるのに時間のかかる国英を完成させ、苦手科目の基礎的な事項は3年生までに固める。3年生からは演習→質問というサイクルを使いながら苦手科目を何とか標準レベルまで定着させ、二次試験対策は添削指導を使って乗り切る。

要約するとこういった感じになるでしょう。

3年間をフルに使って計画を立てて学習を進めたことで、何とか苦手を乗り越えて本番に臨むことができました。

このように書くと、私の高校生活は勉強にまみれた塗れたものに思えますが、昼休みは昼休みで10分間でも友人と大笑いしながら昼食をとっていましたし、下校時に恋人と歩きながら話すのを楽しみに毎日過ごしていました。青春と言えるような高校時代を過ごせました。

むしろ高校に入学してすぐに目標を見据えて計画を立てられたからこそ、適切に息抜きをしつつ3年間を過ごすことができたのだと考えています。


終わりに

私は早くに目標を見据え、自分と目標との距離を常に測り続けたことで、必要となる努力量を把握してめげずに勉強することができました。高校3年間の学習の経過のうち、どれか1つでも欠けていたら合格することはできていなかったと思います。

目標の大学に合格すると一口に言っても、そのために必要な努力量は人それぞれです。
そしてその量があまりにも多いと知ったとき、それでも自分は努力するのだと思えるかどうかが、命運を分けるのではないでしょうか。

今、志望校の難易度に対して自分の学力があまりにも足りないと嘆いているあなたへ、私はエールを送りたいです。カッコ悪くても泥臭くても必死で努力すれば、意外と目標に近づけます

私が尊敬する父から、成績が低迷している時期にもらった言葉を最後に、筆を置くことといたします。お読みいただきありがとうございました。

正しい努力をしていれば、それがマイナスに働くわけがない。目に見えなくても必ず進歩していることを信じなさい。