はじめに
みなさんは、「進振り」という言葉を聞いたことはありますか?
東大生に「東大の魅力は何だと思いますか?」と聞いてみると、「進振り!」と答える人がたくさんいます。
一方で「東大で大変だったことはですか?」と聞いてみると、これまた「進振り……」と答える人が多いです。
魅力である一方で、大変な試練でもある進学選択。
正反対な評価を受けているこの制度の実態は、なかなか分かりにくいのではないでしょうか。
そこで、この記事では東大の「進振り」、つまり進学選択制度について、分かりやすく解説していきます!
そもそも進学選択って何?
進学選択とは、2年生の春学期(4~7月期間)終了時に、学生本人の希望とその時点までの成績によって後期課程でどの学部・学科に所属するかを決める手続きのことです。
東大での生活は、1~2年の前期課程と3~4年の後期課程に分かれています。
前期課程では、文理や科類の違いこそあるものの、全員が教養学部という1つの学部に所属します。ここでは、特定の専門分野にとらわれることなく、さまざまな学問の基礎を学びます。
進学選択を経た3年生以降の後期課程では、学部・学科に所属して、より専門的な内容を学習・探究していきます。
進学選択を利用してできること
では、進学選択によって学部を選択する例を見てみましょう。
ここでは、法学部について考えたいと思います。
2022年度の例では、法学部の定員は420人ですが、そのうち357人が文科一類から、6人が理科全類(理科一類〜理科三類)から、55人が全科類(文科一類〜理科三類)からの進学者でなければならないという規定があります。
法学部定員420人 | ||
文科一類 | 理科全類 | 全科類 |
357人 | 6人 | 55人 |
法学部といえば、いかにも文系というイメージですが、進学選択制度を使えば、理系からも進学することができるのです。
大学入学前の知識で進路を決めるのは、とても難しいことです。東大以外の大学には、高校生のときに興味がはっきりしないまま理系を選択し、大学入学後に法学に興味を持ったものの手遅れだったという経験をした人もいるのではないでしょうか。
理系として大学に進学した後に法学部に行きたいと思った場合、進学選択を利用すれば、法学を学びたいという自分の意思を実現することができます。
しかし、大変な面もあります。
数字を見ればわかるように、理系から法学部に進学するには、狭き門を通り抜けなければなりません。その学問を学びたいと強く思ったならば、それ相応の努力が求められます。
自分が何を学びたいのか、高校時代からしっかり向き合った上で進路を選ぶことが大切です。
科類がどれくらい進学選択に影響する?
多くの大学では、どの学部・学科を志望するか、出願時に決めなければなりません。
しかし、東大の場合、教養学部のうちの6つの科類(文科一類、文科二類、文科三類、理科一類、理科二類、理科三類)のいずれかに出願し、1、2年次は全員がそこに所属します。
科類こそ違うものの、2年生までは全員同じ学部に所属しているということです。
入学時点では、後期課程のいずれの学部・学科に進むかは、推薦入試合格者や外国人留学生などを除き、決まっていません。
では、科類によって何が違うのでしょうか。
下図の色分けのように、文系では、文科一類の人は法学部、文科二類の人は経済学部、文科三類の人は文学部や教育学部に進学しやすくなっています。
一方、理系では、理科一類の人は工学部や理学部、理科二類の人は農学部や薬学部、理科三類の人は医学部医学科への進学に有利です。
そのため、東大を受ける受験生は、自分の関心分野や、2年後に進学したい学部・学科に進学しやすい科類に出願する場合が多いです。
行きたい学部・学科が入学次から変わることもあるので、進学選択を機に自分の進路を見つめ直し、学部・学科の選択を行うことになります。
※この図では進学選択までの期間が1年半となっていますが、進学先が決定するタイミングが2年の夏(入学後1年半)、正式に学部に所属するのは3年からになります。
進学選択のメリット・デメリット
冒頭でも述べたように、進学選択制度は、東大の大きな特徴だと言えます。
では、そのメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。
メリットとしては、大学で自分が本当に学びたいことを考えてから進路を決定できることが挙げられます。
東大には、前期課程の1年半の間、文理の垣根を超えた授業を受けたり、優秀な友人や先輩、教授に相談したりしつつ自分の進路を考える「時間的猶予」があります。
これは、将来やりたいことが決まっていない人にとってはもちろん、決まっている人にとっても、自分の進路を見つめ直すことができるという面で大きなメリットではないでしょうか。
一見良いところづくしに見える進学選択ですが、デメリットもあります。
一つは、人気の学部・学科に行くには良い成績をとる必要があることです。
先述の通り、進学選択は2年生の春学期までの成績をもとに行われるので、成績が悪いと希望の学科に進めない可能性もあります。
また、教養学部で1年半学べる分、後期課程で専門分野を学ぶ時間が短くなってしまうこともデメリットかもしれません。
しかし、これらのデメリットはメリットとして捉えることもできます。
たとえば、人気の学部学科は非常に好成績を修めないと進学できないので、「自分は本当にその学部・学科に行きたいのか」と問い直す良いきっかけを与えてくれます。
その中で、自分の進路と向き合う機会を得ることができます。
また、自分の興味関心と合致した学部・学科は他にないのか、と探す中で、当初は全く想像もしていなかった学部学科にめぐり会うこともしばしばあります。
以上のようなメリット・デメリットをよく理解した上で、進学選択制度を有効利用することが大切です。
おわりに
この記事では、進学選択制度とは大学入学後に学部を選べる制度であると説明してきました。
また、進学選択制度を使えば、自分の興味をじっくりと見定めた上で進路選択ができる一方、高校時代から進路にしっかり向き合う必要もあるということをお伝えしました。
東大を受験してみたいけれど仕組みがよく分からなかった人も、東大受験にあまり興味がなかった人も、この記事をきっかけに、この制度を選択肢の一つとして考えていただければ嬉しいです。
進学選択制度についてより詳しく知りたい人は、ぜひ自分でも調べてみてください!
また、FairWindのホームページでも学部紹介の記事を出しているので、進路選択の参考にしてくださいね!