はじめに
「東大の授業って実際どんな感じなんだろう」
「1、2年生のときから専門的なことを学べるのかな」
このような疑問を抱えている高校生は、多いのではないでしょうか。
実際私も、一般教養を幅広く学ぶ前期教養学部の授業については、よく知らないまま入学してしまいました。
そこでこの記事では、文科一類に所属する1年生の執筆者が、半年間で受けてきた魅力あふれる2つの授業を紹介します。
この記事を読んで、進路選択の参考にしてみてください!
ロシア語初級(会話)
東京大学では、スペイン・フランス・ドイツ・ロシア・イタリア・中国・朝鮮語の中から第二外国語を選択できます。
私はロシア語を選択しており、基礎的な会話の訓練をする「初級(会話)」を受講しています。
ちなみに、ロシア語選択は文系全体で40人程度の少数派であり、東大の中では文ロシと呼ばれ珍しがられるのが日常です。
ロシア語の特徴
皆さんはロシア語についてどのようなイメージを持っているでしょうか。
「ロシア語って変な文字でしょ」
「英語とも日本語とも全く違うんじゃないの」
こんな声が聞こえてきそうですね。しかし、これらの理解は半分当たって半分外れています。
まず、文字についてですが、ロシア語はキリル文字で表記されているため、英語のアルファベットとは異なります。
キリル文字といえばцやфなどが代表的ですが、英語のアルファベットと似ている文字としてеやкなども存在します。そのため想像よりも文字を覚えることの負担は大きくないです。
とはいうものの、見た目は同じなのに発音が違う厄介な文字も存在します。
たとえば、нを見ると皆さんはエイチと読むと思います。しかしキリル文字としてはエヌと読み、英語でのnと同じ発音をします。
このような文字がいくつか存在するため、ロシア語を読むときは英語脳から切り替える必要があります。
次にロシア語と他言語の違いについて話したいと思います。
ロシア語学習の最初の山場は格変化です。
高校生の方々にとって格変化という言葉は初耳だと思いますが、格変化とは、単語の使用方法によって単語の形自体が変化するという厄介な文法のことです。
実際に、ドイツ語には4つの格が存在します。しかし、ロシア語にはそれを上回る6つの格が存在し4月から7月まで文ロシ1年生を苦しめています。
たとえば、книга(本の単数主格)はкниги(生格)・книге(与格)・книгу(対格)・книгой(造格)・книге(前置格)など、語尾が変化します。
一方、この格変化は良い部分にもなります。ロシア語には格変化が多いため、単語の形だけで文中の役割がわかります。そのため日本語と同じように、単語の順番は自由に並べ替えられます。
皆さんもロシア語の基礎知識が分かったと思うので、次に授業の面白さについて話します。
授業の魅力
1つ目の魅力は少人数授業です。
先ほども述べましたが、ロシア語選択者は非常に少ないため、「初級(会話)」の受講者は6名しかいませんでした。そのため、ロシア人の先生と実際に話す時間が多く取れます。
そのため、習った文法事項をアウトプットする良い機会となり、自分の発音も磨けます。私の場合、意識的に格変化を多く使うことで文法事項を効率的に学べました。
また、ロシア人の先生は英語やドイツ語にも精通しているため、覚えるのが難しい単語を伝えると、他言語の関係性などの語源も教えてくれます。これらの豆知識はロシア語への興味をより高めてくれるでしょう。
2つ目の魅力はアニメ視聴です。
ソ連時代に国家主導でアニメを制作していたこともあり、ロシアには独自のアニメ文化が根付いています。皆さんも『チェブラーシカ』などを見たことがあるかもしれませんね。
「初級(会話)」の授業では、ほぼ毎回ロシアのアニメが視聴できます。
その中で最も印象的だったアニメが『クマのプーさん』です。
皆さんにとってプーさんといえばディズニーのキャラクターでしょうが、実はソ連にもプーさんがいました。ソ連のプーさんは本物のクマのようなので、皆さんも衝撃を受けるでしょう。
勉強で疲れたときは、ソ連版クマのプーさんを視聴するといいかもしれませんね。
日本の政治
次に紹介する授業は「日本の政治」です。
この授業は、教授の個性あふれる、戦後の日本政治について学ぶことができる授業です。そこで授業の大変な点と魅力的な点の2つに分けて話します。
大量の課題
授業負担は大きいが得られるものも多いと考えている。「テーマは面白そう……」と感じた場合には「履修条件がなかなか……」と思っても、直感を信じて履修すること。
これは日本の政治のシラバスに書いてある履修上の注意から抜粋したものです。
上の文からも分かるように、この授業の負担は相当大きいです。
そして、教授もそのことを十分に理解したうえで大量の課題を課しています。実際、教科書として6冊の本が指定されるうえに、毎回大量の読書課題が送られてきます。
そして、この授業の最大の負担はレポートと定期試験の両方が課されることです。
他の授業の多くでは、どちらか一方しか課されないので、負担は普通の授業の2倍と言えます。
また、レポートは最低6000字の条件が付いており、レポートを書く前にアウトラインで教授から直接合格をいただく必要もあります。私はアウトラインがなかなか合格せず、3回ほど再提出しました。
これほど負担が大きいにもかかわらず、実際には40人以上の学生がこの授業を受けています。
その理由はなんでしょうか?理由となる授業の魅力について次に述べます。
高い実用性
1つ目の魅力はレポートの書き方を学べることです。
東京大学には「初年次ゼミナール」という小論文執筆のための授業があるので、初ゼミを知っている読者の方はあまり魅力的だとは思わないかもしれません。
しかし、多くの「初年次ゼミナール」では論文講読や論文構成の講義が中心になっており、執筆の手順については授業の範囲外となっています。
それに対して、「日本の政治」では教授が実際に用いているアウトラインの書き方から習い、各学生がフィードバックをいただくため、アウトラインからレポートへの接続が簡単にできます。
2つ目の魅力は現代政治を専門的に学べることです。
高校生の皆さんは、現在の政治についてどの程度知っているでしょうか。私は高校時代に日本史と世界史を学んでいましたが、第二次世界大戦後の現代政治についてはあまり学ばなかったように思います。
一方、この授業では、戦後の歴代内閣の功績について細かく学ぶことができます。私は、自民党の歴代総理大臣と幹事長の出身派閥を覚えてしまうほど覚えてしまうほど戦後政治に詳しくなれました。
専門的な講義の内容はこれだけではありません。
最も専門的なのが国会法についてです。
おそらく多くの方が「国会法ってなに?」と思われたと思います。私も、この授業を受けるまで国会法という言葉を聞いたことすらありませんでした。
国会法とは、国会審議の規則を定めたもので、皆さんが習った衆議院の優越などが、この法律で定められています。
教授自身、「日本広しと言えど、国会法について学部段階で授業する場所は駒場しかない」とおっしゃるほど、国会法は非常に専門的です。
この記事では、授業内容の一部を紹介します。
国会法は、法案の審議順を決める議院運営委員会、実際に審議を行う常任委員会、全体で採決を行う本会議の3つの設置を定めています。また、イギリスの首相と違い、日本の首相は審議順と審議期間を定めることができません。
そのため、ある法案に反対する議員は、本会議での採決に移る前の、議院運営委員会と常任委員会の段階で妨害を行える構造になっているのです。
この論理で説明できる代表例が、民主党政権の国家戦略局構想の設置です。
民主党は、政治主導を実現するために、内閣官房に国家戦略局を設置しようとしました。局の設置には、内閣の構造などを規定する内閣法の改正が必要だったため、内閣法の改正を含む、政治主導確立法案が国会に提出されました。
しかし、参議院選挙を目前にしていた民主党議員は、政治主導よりも国民受けがよい子ども手当や高校無償化などを優先したため、議院運営委員会で政治主導確立法案の審議を後回しにしたのです。
その結果、法案審議が開会中に終了せず、選挙に負け参議院での過半数を失ったので、政治主導確立法案の成立は断念されました。
つまり、国会法の規定により、与党議員による重要法案の成立が妨害しやすくなっている、ということです。
このように、「日本の政治」では、複雑で理解しにくい現代の政治を理解する上で非常に役に立つ知識を得ることができるのです。
おわりに
ここまで読み進めていただきありがとうございました。
皆さんは東大の授業についてどう思ったでしょうか。
この記事が皆さんの進路選択に役立つことを願っています。
目標に向かって勉強も頑張ってください!
応援しています!