理科二類生からのオススメ授業

東大の面白い授業 _理系編

はじめに

こんにちは。大阪の四天王寺高校出身で、現在、教養学部理科二類1年のM.Hです。

4月に入学してから3か月程が経ち、ようやく東大の授業の進め方やシステムに慣れてきた頃です。

こちらの記事では、私が面白いと感じた2つの授業について紹介します。

私も高校生のとき、この記事にアクセスしてくれた皆さんのように、東大の授業について知りたいと思い、情報収集していました。

しかし、かなり抽象的な情報から、東大生向けの細かな情報まであり、イメージすることが難しかった記憶があります。

そこで今回は、オススメの授業紹介の前に、高校生の頃から知っておくと良い、履修の仕組みについて軽く説明します。

もう既に知っている方、早く授業について知りたい!という方は2つ目のセクションから読み進めて下さい。

東大の履修の仕組み

年間スケジュール

東大の1年間は4ターム2セメスターに分かれており、1タームで完結する授業と1セメスターで完結する授業があります。履修計画は各セメスターの始めに立てる場合がほとんどです。

具体的なスケジュールは以下の区分になります。

  • Sセメスター:4月~7月
    • S1ターム:4月~5月
    • S2ターム:6月~7月
  • Aセメスター:10月~1月
    • A1ターム:10月~11月
    • A2ターム:11~1月

科目区分

東大の科目は以下の4種類に分かれています。

  • 基礎科目
    • 各科類ごとに定められた必修科目
    • 専門分野に入る前段階で必要な教養を身に付ける
    • 外国語(2か国語)、情報身体運動・健康科学実習(高校の体育と保健の授業を合併させたようなもの)、初年次ゼミナール(アカデミックスキルの体得)は文理共通
    • その他に、文科生は社会科学人文科学、理科生は自然科学に分類された授業を履修
  • 展開科目
    • 任意の選択科目
    • 基礎科目などで学んだ知識を研究や実習、議論や発表の場で活用
  • 総合科目
    • 取得しなければならない単位数は定められいるが、科目は選択可
    • 「言語・コミュニケーション」、「思想・芸術」、「国際・地域」、「社会・制度」、「人間・環境」、「物質・生命」、「数理・情報」から文理関係なく履修
    • いわゆる、リベラルアーツ教育を最も実感できるシステム
  • 主題科目
    • 文理関係なく選択可
    • 各専門性の高い教員から講義を受けるが、授業への主体的な参加が求められることが多い
    • 学術フロンティア講義(オムニバス式講義)」、「全学自由研究ゼミナール(少人数のゼミナール形式)」、「全学体験ゼミナール(体験活動が主)」、「国際研修(国際交流やグローバルが主題)」の4種類あり、それぞれ多くの分野の講義が開講されている

1年生は一番上の基礎科目がほとんどを占め、選択できる科目は限られています。私の場合、1週間で14コマ授業が入っていますが、そのうち、13コマが基礎科目、1コマが主題科目です。

必修が多い分、自分からは触れることのない分野も学ぶことになるため、自分の興味分野と繋がる部分に気づき、世界が広がった感覚があります。進みたい専修が増え、進学先の選択に少し困っていますが......

では、本題の授業の紹介に入ります。

オススメ授業1~ALESS~

Active Learning of English for Science Studentsの略で、文系では同様の科目にALESAActive Learning of English for Students of the Arts)があります。

これは、上記の必修である基礎科目の1つです。英語のアカデミック・ライティングスキルを身に付ける授業で、1本の英語論文を書くことがゴールとなっています。

先生により進め方は異なりますが、私のクラスは毎週少しずつ課題に取り組む、という形でした。

そして、最終授業でポスター発表を行うとともに、これまでの課題をまとめて1本の論文を完成させました。

以下のような細かな手順を踏みながら進めていくため、論文作成経験者も未経験者も、程良いペースで取り組むことができると思います。

  • グループ活動:テーマ決め→先行研究サーベイ→データ収集
  • 個人課題:序論→方法→データ分析→結果→考察→ポスター発表→論文完成

ポスター発表まで終えた今の私にとっては、「ハードだけど、やりがいのある」授業だと感じています。

ハードな一面

英語で文章を書く、という作業は予想以上に時間のかかるものです。

受験勉強中の東大英語対策で培った力を活かすことができるものの、論文作成ならではのハードな面は多くありました。

たとえば、ALESSでのテーマは必ずしも自分の興味と一致しないため、書くことが思い浮かばない場合は、インターネットを駆使して情報収集をするしかありません。

また、どのフェーズでも重要なことは、構成の組み立てです。

書くことが決まっても、いきなり、文章を書いていくと、支離滅裂な文章になってしまいます。

そのため、書きたいことを一覧にしたあと、主張が似ているもののグループ化、接続関係の確認、他人と自分の主張や事実との区別、などの工夫が必要になってきます。

語彙の面でも、先行論文を参考に良い言い回しを探す、英和・和英・英英辞典を駆使して趣旨に合う単語を考える、などを行っていました。

ここまでの作業が終わるとようやく、文章化していきます。慣れるまでは、1週間の大半を費やしていました。

やりがいを感じられる

上の文章を読むと、かなり負担が大きいと感じ、入学前から暗い気持ちになってしまうかもしれません。

しかし、徐々に楽しい面も見つかり、また、完成に近づくにつれ、やりがいを感じられるようになります。

たとえば、データ収集では仮説通りの結果が出ることは少なく、そのような中で考察を行わなければなりません。このような状況はALESSに限らず、今後、様々な場面で出てくると思います。

ALESSでは、先生からアイデアを生み出すサポートをしていただきました。

また、過去の論文を読みながら、何かしらの考察を行い、思わぬ結果を見出すことができたときは、研究の醍醐味を感じました。

このような紆余曲折を経て、最後の考察を書き終えた時、大きな達成感を感じました。

この授業を履修し終わったとき、数か月前には予想もしなかった、英語のアカデミック・ライティングスキルが身についているはずです。

文理に関わらず、英語の論文を読み、英語で論文を執筆する機会は増えていきます。1年生の最初の段階で、このスキルを学んだことは、今後、大いに役立つと思っています。

この授業を機に、英語の論文を書くことへの抵抗は減りましたし、4月~7月のSセメスターで終わってしまうことに、1種の寂しさも感じています。

この文章を読んでいる皆さんは、英語が好きでしょうか。様々な場面で耳にしていると思いますが、大学入学後、英語を活用する機会は格段に増えます。

ALESS/ALESAの授業を楽しみに、英語の勉強を頑張って下さい!

オススメ授業2~地球医のすすめ:タネ蒔く農学部有志~

2つ目は、私のSセメスター唯一の選択科目、「全学自由研究ゼミナール(地球医のすすめ:タネ蒔く農学部有志)」です。

これは、主題科目に該当します。必修科目が多い中、選択科目は進学予定の農学部の先生方が担当されている科目を取りました。

大学のことが全く分からない入学当初、興味の赴くままに選択しましたが、想像以上に面白い授業でした。

授業の概要

毎週、農学部の異なる分野の先生方からの講義を受け、質疑応答を行います。そして授業後に、考えたことをオンラインツールで互いに書き込み、先生方からコメントを頂く、という形式が基本です。

最終週には、数人のグループで「地球環境を良くするための提案」というテーマでプレゼンを行います。

このオムニバス形式の講義は、興味分野の多い私にとても合っていました。

自分のやりたい研究にも様々なアプローチがあることに気づきましたし、新たな価値観を身に付けることができました。

また、学年・文理に関わらず履修できるため、先輩方や文系の方からも刺激を受けました。

主題科目の特徴を活かし、研究の基礎より、各教授の研究内容や応用例を伝えることを重視されていたように感じています。

この授業を機に、これまで希望していた専修以外でも、学びたい分野が見つかり、進学先選択に困っていることは良い悩みです。

「地球医」とは?

ところで、この授業のタイトルに含まれている「地球医」という言葉をご存知ですか。これは、100年後の地球を見据えて、協働・提案・実装できる人材のことです。

農学部では「One Earth Guardians育成プログラム」という、このような人材を育成するプログラムがあり、私も4月から参加しています。活動内容に興味のある方は、プログラムのホームページをご覧ください。

この授業は上記のプログラムのジュニア版として開講されています。

そのため、オムニバス講義であるものの、どの先生方も共通して「農学の力で地球上の問題を解決していきたい!」という熱い思いを持たれている印象を受けました。

そのための研究対象は遺伝子・分子・細胞レベルから生態系・地球レベルまで多岐に渡っています。

また、科学だけではなく、人文学や社会、経済面での知見も総動員して解決策を考えていくため、自分の世界を広げるには絶好の授業でした。

おわりに

東大の履修の仕組み、オススメの授業はいかがでしたか。

1年のSセメスターのみの体験談のため、科目の種類は限られたものでしたが、東大の授業の面白さを少しでも感じていただけると嬉しいです。

オープンキャンパスでも高校生向けの模擬授業が行われていますので、興味を持った方は、オープンキャンパスのサイトをご覧ください。スケジュールの詳細はタイムテーブルに掲載されています。

履修科目を決める際には、授業内容の詳細が書かれたシラバスを読みますが、読んでいる時間が楽しかった、という声をよく聞きます。

もちろん、私も期待を胸に読んでいました。今は必修科目の割合が高いですが、今後の選択科目が楽しみです。

皆さんも、入学後にわくわくしながらシラバスを読んでいる自分を想像して、受験勉強を頑張ってください!