【厳選! メルマガ記事】学問紹介 〜言語学編〜
東大生が書いた記事を、オープンキャンパス期間中に限定公開!
ここでしか聞けない東大生の声をお届けします!
この記事では、東大生が言語学という学問について紹介します!
大きそうに聞こえる音がある? あの商品や、あのキャラクターの名前に隠れた法則とは?
言語学に興味がある人、どんな学問なのか知りたい人は必見!
身近な例を入り口に、学問の世界を覗いてみませんか?
(この記事は2021年5月に配信されたものです)
言葉と音の不思議
みなさん、こんにちは! 今回は、言語学という学問について紹介していきます。
言語学とはどんな学問か、みなさんはイメージできるでしょうか? もちろん、「言語」というくらいですから言語を研究しているわけですが、具体的に何をやっているか、あまりイメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、言語学に関して、ひとつ具体的なテーマを紹介してみたいと思います。
早速ですがクイズです。“mil” “mal”という単語のうち、どちらか片方が「大きいテーブル」、もう片方が「小さいテーブル」という意味だとします。
どちらの単語がどちらの意味を持つでしょうか? 調べずに、フィーリングで答えてみてください。
ある実験では、この質問をされた英語話者は、「mil→小さいテーブル、mal→大きいテーブル」と答える傾向があることが示されています。また、日本語の話者にも同様の傾向があるようです。皆さんはどうでしたか?
この実験では、“a”という音には “i”という音より大きいイメージがあるということが示唆されています。このように、音がなんとなくのイメージを持つことを「音象徴」といいます。
では、皆さんにとって身近な音象徴の例をいくつかあげてみましょう。
ものの名前と音象徴
▶︎怪獣
「ゴジラ」と「コシラ」という二匹の怪獣がいたとします。どちらが強そうですか?
おそらく、多くの人が「ゴジラ」と答えると思います。これは濁点が多いと強そう、というイメージですね。
▶︎ポケモン
サルノリ→バチンキー→ゴリランダーと進化するポケモンがいます。僕はダイパ世代なのでナエトルの方が好きですが(笑)。
大きさ・重さ・強さ・進化レベルが増すごとに、名前に含まれる濁点の数が増え、名前が長くなっていく傾向があることを示した研究がありますが、今回あげたのはその典型例ですね。
▶︎おむつ
ムーニーマン、パンパースなど、おむつの商品名にはパ行、マ行などの音が多く含まれます。実際、これらの音とおむつの名前との音象徴的なつながりを示す実験も行われています。
パ行、マ行は唇をくっつけてから離すことによって発音される音ですが、これは赤ちゃんにとって発音しやすい音です。パパ、ママなどを思い浮かべると分かりやすいのではないでしょうか。
おむつのネーミングは、パ行やマ行などは赤ちゃんっぽい、というイメージと関係があったのですね。
▶︎メイド
メイドさんにはつんとした感じの人とゆるふわな感じの人がいるらしいのですが、カ行、サ行などの濁点がつく音はツン系のメイドさんに似合い、ナ行、マ行などの濁点のつかない音はゆるふわ系のメイドさんに似合う傾向があるという研究がされています。
なぜメイドさんの名前を研究しようと思ったのかよくわかりませんが、名前の響きがその人のイメージに関わるというのは音象徴の典型ですね。
他にも、音とイメージが結びついている例はたくさんあります。自分や友達の名前、コンビニに置いてある商品名、小説やドラマやアニメのキャラクター名などにも音象徴が隠れていないか、ぜひ探してみてください。ペットを飼ったとき、就職して新商品を開発するときなどに音象徴を踏まえて名前を考えるのも面白そうですね。
色々な学問に触れてみよう
こんな風に、実験や調査を通して身近にある音を研究するのが言語学の研究のあり方のひとつです。いろいろな分野・研究方法があるので一概には言えませんが、少しは言語学についてのイメージを持ってもらえたでしょうか?
高校までの勉強では、国数英理社などの勉強が中心で、なかなか言語学に触れる機会がないと思います。英語や国語で扱う内容の中には言語学っぽいものはほとんど含まれていません。言語学と語学は似ている部分はあっても別物です。
これは、言語学に限った話ではありません。大学では、高校まででやらなかったような新たな学問との出会いがあります。国数英理社しか知らない状態で進路を決めて、大学に入ってから、「こんな学問があることを知ってたら、別の進路を選んでいたのに」なんてことになったら嫌ですよね?
これを読んでいる皆さんは、ぜひ本を読んだり知り合いの大学生に話を聞いたり、FairWindのメルマガやホームページを読んだりして、色々な学問に触れてみてください。そうして視野を広く持って、後悔のない進路選択をしてください。
☆文献紹介
上にあげた例は、言語学者の川原繁人先生の論文などを参考にさせていただきました。川原先生のホームページがありますので、そこから論文などにアクセスできます。ぜひ読んでみてください。
さらに興味を持った人は、ぜひ川原先生のこの本を読んでみてください。
川原繁人『音とことばのふしぎな世界』 岩波科学ライブラリー
いかがでしたか? 学問の入り口は身近なところにあるんだな、と感じた人も多いのではないでしょうか。
この記事をきっかけに、言語学や様々な学問に興味を持ってくれたら嬉しいです。
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