はじめに
こんにちは!
東大二次試験の現代文って難しいですよね。
難解な論説文や記述式の回答に、苦労している人も多いのではないでしょうか。
私も高校生時代は「この論説何が言いたいの?」「傍線部の説明ができない......」などと苦しみながら過去問を解いていました。
この記事では、そんな現代文が苦手な人向けに、文理共通の第1問について、本番で失敗しない読み方や解き方を紹介していきたいと思います!
なお、本記事中の過去問への解説は筆者個人の見解であり、東京大学が公表しているものではありません。
問題文を論理的に読むには?
抽象と具体との関係に注目!
東大現代文の第1問、論説文は、抽象的な部分とそれを支える具体例とで構成されています。抽象的な部分は、論旨やそれに至るまでの流れを述べていて、具体的な部分は、具体例を用いて抽象部分の根拠や解説を示しています。
例えば、「東京は世界の中でも雨の多い街だ」という抽象部分があり、そこに「東京の年間降水量は◯◯mmで、これは世界◯位だ」という具体例が述べられているという感じです。
どこが抽象部分で、どこが具体例かを確認しながら読むことは簡単なようで、とても大切です。
抽象的な部分と具体例との対応を意識し、四角で囲むなど、文章に書き込みながら読みましょう。それをすることで、文章が格段に読みやすくなります。
大抵抽象部分と具体例は段落で分けられていますが、同じ段落内にある場合もあるので注意しましょう。
意味段落に分けよう!
それができたら、次に意味段落はどこで分かれるのかを判別してみましょう。
意味段落とは、文章を意味のかたまりで分けた時の最小単位です。「問題提起」→「問題への仮説や具体例」→「結論」のような流れが多いです。
意味段落で分けると、文章全体の論理構造が掴みやすくなるのでおすすめです。
ちなみに、東大現代文の傍線部は、基本的に意味段落につき1つずつです。そのため、解答を考えるときは、この意味段落のまとまりを意識すると、文中のどの範囲を解答に含めれば良いのかがわかりやすくなります。
答案作りのコツは設問文にあり!?
設問文は全部で3種類!
東大現代文の解き方のコツは設問文にもあります。
設問文をさっと読み飛ばしている人はいませんか?
もしこれを読んでいるあなたが設問文に注目していなかったとしたら、とてももったいないです。なぜなら、設問文は出題者の意図がはっきりと見える部分だからです。
出題者が傍線部についてどんなことを書いてほしいのかを、設問文から読み取ることができます。それをあまり読まずに、意図と違う答えをしてしまったら、もったいないですよね。
では、実際にどんな設問が出題されているか、見ていきましょう。
東大現代文で出題される設問文は「どういうことか、説明せよ」「それはなぜか、説明せよ」「なぜそういえるのか、説明せよ」の3種類です。
それぞれの設問文について、答えるよう求められていることや答え方を説明します。
1:「どういうことか、説明せよ」
「どういうことか、説明せよ」という設問文が求めているのは、傍線部の内容説明です。傍線部の言葉や表現を、文中の言葉を使いつつわかりやすく説明する必要があります。
この設問文の場合は、傍線部に抽象的な表現や比喩表現が含まれている場合が多いので、具体的に、解答だけ読んでも内容がわかるように説明しましょう。
また、説明に使う範囲は、傍線部を含む意味段落です。しかし、「本文全体の趣旨を踏まえて」とある場合は意味段落内に限らず、結論を踏まえて書きます。文末は必ず「〜こと。」です。
では、実際に過去問を見ていきましょう(お手元に2013年度東大現代文第1問をご用意ください。著作権の関係上掲載を控えています)。
設問2では、傍線部について「〜とはどういうことか、説明せよ」という設問が作られています。
では、どこからどこまでを解答に使う範囲とするのでしょうか。
まず、傍線部の後ろを見ると、「それを避けるためには〜」とあります。この「それ」は傍線部の内容を指しているので、話題が傍線部と反対の内容に移り、傍線部を含む意味のかたまりからは外れていることがわかります。
次に前を見ましょう。傍線部を含む段落の2つ前の段落に、「このように〜」とあり、前の段落をまとめていることがわかります。なので、その段落は1つ前の意味段落です。
よって、解答に使う範囲は傍線部を含む段落とその1つ前の段落だとわかります。
次に意味段落内の言葉で説明しましょう。このときのコツは、傍線部を含む1文に注目することです。
この1文を読むと「ランボーのテクスト」と「翻訳者による日本語作品」とが対比されているとわかります。
これを踏まえると「翻訳者による日本語作品」=「翻訳者自らが読み取った内容を、原作の伝え方から外れ、母語で読みやすく理解しやすいものに言い換えたテクスト」となります。
このように、意味段落と傍線部を含む1文に注目して、傍線部の抽象的表現を説明しましょう。
2:「それはなぜか、説明せよ」
次に、「それはなぜか、説明せよ」という設問文です。
この設問文が求めているのは傍線部の理由説明です。傍線部前後や傍線部を含む意味段落の因果関係を説明しましょう。文末は必ず「〜から。」です。(「〜ため。」は読み手が目的を示す用法と混同しやすいので注意!)
では、実際に過去問を見ていきましょう(お手元に2013年度東大現代文第1問をご用意ください。著作権の関係上掲載を控えています)。
設問1では、傍線部について「それはなぜか、説明せよ」という設問が作られています。
意味段落内の因果構造を理解しましょう。
まず、文章冒頭で筆者は「詩人ー作家が言おうとすること〜はありえない」と主張しています。
そして、1段落目最後の「だから〜」と2段落目最初の「それゆえ〜」で、主張から導かれる2つのことを指摘しています。傍線部はその2つ目の最後に当たる部分です。
したがって、傍線部は冒頭の1文から導かれている事柄であると言えます。よって、傍線部について「なぜ」と問われて答えるのは冒頭の『「詩人ー作家が言おうとすること〜はありえない」から。』でしょう。
このように、意味段落内の因果関係を、理由を示す「だから〜」や「それゆえ〜」、結論を示す「よって〜」などの接続詞に注目して理解しましょう。それが「なぜ〜」問題の攻略への第1歩です。
3:「なぜそういえるのか、説明せよ」
最後に「なぜそういえるのか、説明せよ」という設問文です。
この設問文が求めているのは傍線部の根拠の説明です。傍線部が示している内容が、意味段落内のどんな論理関係に基づいているか説明しましょう。
この際、傍線部の理由説明である、2「それはなぜか説明せよ」と混同しないよう注意しましょう。文末は同じく「〜から。」です。
では、これも過去問で具体的に見てみましょう(お手元に2013年度東大現代文第1問をご用意ください。著作権の関係上掲載を控えています)。
設問4は、傍線部について「なぜそう言えるのか」と問われている問題です。傍線部の前後に根拠を探しましょう。
2つ前と1つ前の段落では、「異なる言語を調和させようとする対話」について書かれています。
それを受けて、傍線部を含む段落では「翻訳は〜開かれているかもしれない」という主張をしています。
そして次の段落では「もっと大きなパースペクティブで見ると〜」と別の話題に移っています。
これを踏まえると、傍線部の根拠は前の段落の内容をまとめれば良いということになります。
「なぜそう言えるのか」問題では、傍線部の前後を見て、根拠となる部分を探しましょう。
120字問題の解き方
次に、東大現代文第1問の最後に必ずある、120字問題についてお話ししていきます。
この問題は、「問題文全体の要約だ」と勘違いされることが多いです。
しかし、この問題は要約問題ではありません。
形式が他の問題と異なっているため勘違いされがちですが、他の問題と問われていることは同じなので、同じように回答を作成しましょう。
いざ、答案を作ってみよう!
最後に、答案の作り方についてです。文章の論理関係を掴んだ後、どうやって答案に落とし込むかを見ていきましょう。
1:解答欄は1行に30文字!
東大現代文の解答欄は、字数指定のない1〜2行の縦書き解答欄なので、書こうと思えばいくらでも文字を詰め込めてしまいます。
しかし、際限なくたくさん書けば良いわけではありません。文字を詰め込みすぎると、解答で伝えたいことがぼやけてしまう上、採点官にとって読みにくくなってしまいます。
そこで大事なのが、1行につき30字を目安にすることです。厳密に30字である必要はありませんが、30字を大きく超えたり、少なすぎたりしないようにしましょう。
大きく超える場合は余計な要素が入っている、少なすぎる場合は書くべきことを書けていないということです。
東大現代文の解答欄は1行か2行なので、全体で30字前後または60字前後ですね。
2:本文の寄せ集めではなく”問い”に答えよう!
解答を作る際に陥ってしまいがちな失敗は、解答を本文の言葉の寄せ集めにしてしまうことです。
傍線部の近くにある大事そうな言葉を集めて記述すれば、確かに「それっぽい」回答になります(これには各要素ごとに配点を決めて、「これが入っていれば1点!」と採点している某予備校模試の影響もありますね)。
しかし、要素を寄せ集めただけの回答は、本番では通用しません。
そこで大事なのが、「問いにきちんと答えているか」、すなわち設問と回答だけを見ても話の筋が通っているかという観点です。
回答を書き終わったら、設問文と自分の解答を読み直して、自分の回答が問いに答えられているか、本文を読んでいない人でも理解できるか考えてみましょう。
3:漢字問題になっている部分は解答に使わない⁉︎
最後に1つ、迷った時に役立つテクニックをお伝えします。それは、漢字書き取り問題になっている部分は記述解答に使わない部分だということです。
問題文は難解なものが多く、抽象と具体との関係や論理構造、因果関係が分かりづらいこともあります。そして、問題出題者もそれをわかっています。
そのため、漢字問題を紛らわしい部分に持ってきて、「ここは回答に使う部分ではないですよ」というヒントを出してくれる場合があります。
毎年というわけではありませんが、回答に迷ったときのために頭の片隅にでも置いておくと良いでしょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
東大現代文で失敗せず点数を積み重ねるコツは、抽象と具体・設問文に注目すること、そして「問い」にきちんと答えることです。
難解な現代文に苦労している方の手助けになったなら幸いです。
最後に考えてみましょう。なぜ入試で現代文の問題が出るのでしょうか。
現代文は古文・漢文とは違って暗記を積み重ねるものでもありませんし、数学や理科のように、定理を体系的に学んで行くものとも違いますよね。
それゆえ、どんな力が問われているのかも分かりにくく、勉強法も問題対策も立てにくい教科です。そのつかみどころのなさが苦手な人も多いでしょう。
では、現代文では何が問われているのでしょうか。それはずばり教養です。
現代文で良い点を取るのに必要なこと、そして現代文で大学が測ろうとしているものは受験生がいかに教養を持っているかです。
教養は受験勉強で一朝一夕に身につくものではありません。自分の学習や経験などから少しずつ身についていくものです。その意味では、現代文の対策として教養を身につけようとすることは、受験勉強に不向きと思われるかもしれません。
しかし、教養は大学入学後も、そしてこれからの人生でも役に立ちます。これを機に現代文の勉強を頑張ってみませんか?
出典:東京大学2013年度国語第1問『湯浅博雄「ランボーの詩の翻訳について」』