【合格体験記】工学部推薦入試

地方高校生に、追い風を

推薦体験記

みなさんこんにちは。
今回は、工学部推薦生(2020年度5期, 領域1)として受験体験記を書かせていただきます。
少しでも推薦について知ってもらえたり、興味が湧いてくれたりしたら嬉しいです。


1. 推薦入試という選択肢

なぜ私が推薦入試という選択肢を考え始めたのか。一番最初の理由は至って単純で、東大に受かる可能性があるならチャンスは少しでも多い方がいいと思ったからです。その後きちんと仕組みや享受できるメリットを調べて、受験を本格的に考えるようになりました。(高3の夏頃から緩やかに推薦入試の準備を始めました。)

具体的に私が惹かれたメリットは、
1. 学部指定で入学できる
2. 早期履修のしやすさ
の2つです。

通常、東大の入試は科類だけを決めて出願する方式で、後期過程(大学3年生以降)の進学学部は、成績も加味された上で希望に基づいて、後から決定されます。しかし、推薦生は進学選択には参加せず初めから学部が決定した状態で入学することができます。このメリットはまた後ほど述べたいと思います。

もちろん、他の学生と同様に2年間は前期教養過程を過ごし、3年生から後期学部生になるという仕組みは変わりません。しかし、推薦生は前期教養過程に属して幅広い学びを受けつつ、希望すれば早くから後期過程の授業を受けることができるのです。元々前期教養過程に魅力を感じていたので、上記の2点は私にとっていいとこどりのメリットでした。

条件に合うならば、推薦入試はとても魅力的な選択肢のひとつです。


2. 向き合ったもの・考えたこと

振り返ってみると、私にとっての推薦入試は「ただ大学に入るための入試」ではなかったように思います。準備期間は、ひたすらに自分と向き合って将来について悩み考える時間でもあり、だからこそ、結果がどうであれこの受験には意味があると思えるものでした。

他の学部については詳しく知らないので言及しませんが、工学部では、1次審査で各種書類(志願理由書, 高校時代の活動報告書等)の提出、2次審査で約45分間の面接があります。私は学術系オリンピックへの出場経験がなかったため、研究活動や海外研修の成果を活動報告として提出しました。

ここで難しかったことが、高校時代の活動と自分が将来やりたいこととの繋がりです。高校での研究は放射線関連の研究で、海外研修も多くはその内容に関連したものでしたが、私の興味分野はまちづくりや都市工学でした。自分の中できっかけや考えはあったものの、それを相手に伝わるように、軸を意識しながら自分の言葉にしなければいけなかったため、書類準備でも面接準備でも苦労しました。高校時代にやっていたことがそっくりそのまま将来に繋がる人は少ないと思うので、それよりもむしろ、経験を通して何を考えたり得たりしたのかということが大切だろうなと意識して進めました。

きっとこの推薦入試を受けていなかったら、自分の高校時代の活動を深く振り返ることはなかったと思うし、将来もしくは大学でやりたいことにも真剣に向き合っていなかったと思います(勉強が忙しくなればなるほど、蔑ろにしてしまいますね) 。たくさんの先生方に協力していただいて、他者から見た自分の強みや評価を知ることができたのも良い経験だったと思います。今の私のために必要な経験でした。


3. 面接当日

まず形式的なことを紹介すると、工学部の二次審査は5人の教授対自分の面接(約45分間)です。志望する領域によっても変わってきますが、領域1を志望した私の場合は口頭試問等がなく、純粋に教授の方々との対話という感じでした。

対話の中身としては、高校時代の話も今後の話も満遍なく聞かれたような印象で、自分が書類に書いたり面接の中で話したりした内容についてさらに深く掘り下げられた記憶があります。

また、「あなたの理想を実現するためにはどのような技術が必要になると思うか, もしくは今の段階で考えている構想はあるか」など、かなり具体的な話を求められることが多かったと思います。面接練習で用意したような質問は殆どありませんでしたが、その場で思考をまとめて自分の言葉にするという経験として、練習は役立ったのではないかと思っています。

正直、面接を受ける前までは45分ってなんて長いんだろうと思っていました。その他にも、圧迫面接だったら嫌だなとか自分の専門性の脆弱さを突かれたらどうしようとか、本当にいろいろな不安がありました。実際はそこまで心配することはなかったというのが結論です。時間に関しては、教授が5人もいらっしゃるので、それぞれの方から質問を受けていたらいつの間にか時間が過ぎているという感じでした。内容に関しては、面接というよりは対話です。これは自分が受験準備を進めている時にも同じようなことを言っている先輩がいらっしゃって、当時はなんのことか実感がわかなかったのですが、実際受けてみてすごく納得のいく表現だなと感じました。

また、その道のプロである教授を5人も相手にしてお話ができるというのはある意味貴重な経験だったと思います。自分にはなかった思考の切り口から質問を投げかけられることもあり、全てに満足いく回答ができた訳ではありませんが、対話自体は想像よりも楽しかったです。(緊張はもちろんしていたので、面接中の自分の言動はそこまではっきり覚えていませんが)


4. 入学後について

メリットとして、1.学部指定で入学できる, 2.早期履修のしやすさ の2つを挙げましたが、これらについてもう少し触れておこうと思います。まず、学部指定で入学できるということですが、これは入学後の履修の自由度に影響があると感じています。一般入学生が乗り越えなければならない進学選択を経る必要がないため、そこまで点数を気にせず、興味に応じた履修が可能です(東大生の中でも勉強ができる人にとってはあまり関係ないかもしれませんね……)。

例えば、私は世界史にも美術知識にも昏いですが、内容が面白そうだった、かつ美術観賞が好きという単純な理由で美術史の授業をとりました。受講生は文系の学生が多いですが、今までになかった分野の学びを得ることができてとても楽しいです。加えて、早期履修も可能なので、1,2年生のうちに工学部の授業をとって後期過程分の単位を得ることができます。私は、まだ活用できていないのでこれから工学部の授業を履修していく予定で、楽しみにしています 。他にも、アドバイザー教員として何人かに1人先生がついてくださるので、進路や履修の相談をしやすいというのもメリットとしてあるかもしれません。


5. 推薦を考えている方へ

ここまで書いてきたように、私は推薦入試を受けてよかったなと思っています。別に学術系オリンピックに出ていなくても、スーパー高校生じゃなくてもいいんです。打ち込んできたものや興味があるものに対して、考えや熱意を自分の言葉で伝えられることが強みになる、そんな入試方式だと思います。

推薦に全力を注いで勉強を二の次にしてしまうのは良くありませんが、あくまでも選択肢の1つ・チャンスの1つとして挑戦する意義はあるのではないでしょうか。FairWindにも推薦生が何人か所属しているので、受験準備で疑問に思うことや不安に思うことがあればぜひ質問/相談してみてくださいね。応援しています。