【東大理学部】生物学の世界をのぞいてみよう

地方高校生に、追い風を

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はじめに

私は東京大学理学部の生物学科に所属しています。

まだ生物学においては駆け出しも駆け出し、まだまだひよっこの学部3年生です。しかしこんな私でももうすでに生物の世界に大変魅せられています。当分の間抜けられそうにはないです(笑)。

何がそんなに面白いの?理学部って何するの?生物学科って普段何してるの?生物勉強してその先どうなるの?などなど疑問に思うことはたくさんあるかと思いますが、実際に所属しているからこそわかる生物学の世界、生物学科の生活をお伝えしようと思います。

生物学とは?

これを読んでいる皆さんは今手元に生物の教科書があるでしょうか。もしあるならば、目次をさらっと見てみてください。細胞の構造、光合成、筋肉の収縮の仕組み、エネルギー生産........などなど色々と項目が書いてありますね。その目次はよくまとまっているものだと思います。というのも、高校で扱う内容も、大学で扱う内容も大まかなくくりとしてはそんなに大差がないのです。

生物学科で学ぶ内容と、それに対応する高校での学習内容をあげてみたいと思います。

  • 細胞生理学(高校:細胞の構造、細胞小器官の働きなど)
  • 発生生物学(高校:ウニとカエルの発生)
  • 遺伝学(高校:メンデルの遺伝の法則)
  • 分子進化学(高校:分子時計、中立進化説)

などなど、高校で学ぶ生物の内容は大学で学ぶ内容に完全に直結しています。だから、高校で生物をやっている人ならとてもとっつき易い学問であるし、高校で生物を扱ってない人にとっても入り込みやすい学問であると言えるでしょう。

では、大学では何するのでしょうか?

大学で学ぶ生物学

大学ではまず、高校の内容に加えてさらに突っ込んだ内容、最先端の内容を学びます。生物の世界を学び、最先端で何が行われているのかを把握した後に研究の世界に飛び込むことになります。

生物学の何が面白いのか?

生物学をやっている方々に生物学の魅力は何かと問うと、十人十色の答えが返ってくると思います。質問の答えになっていないですね(笑)

ここではあくまで私が、現時点で感じている面白さについて語らせてもらうと、生物学は「自分の周りの世界をもっと鮮やかにする」学問だと思っています。道を歩いているだけで、この広葉樹は何才くらいで、どのような環境をくぐり抜けてここまで大きくなったのか?、この花はなんでこんなに赤い色をしているのか?、身の回りの自然物にまず気づくことができ、視界に入ってくる情報に対して色々な疑問をもち、勉強して知識を増やすことでその疑問を解決することもできるのです。

生物を勉強していると、このように、単なる背景として捕らえられていた身の回りの世界が途端に意味を持ってくるようになり、なんとも不思議な充足感に満たされます。ここが生物学の面白さではないかと今は思っています。

また、この先もっと違う面白さを見つけることができるのではないかと期待もしています。

理学部って?

理学部って他の理系の学部とは一線を画すのではないかと私は感じています。研究された結果がそのまま社会の役に立つなんてことは少ないでしょう。

それでも理学部という学部が存在する意義は、理学部が学問の基盤を作る大変重要な役割を担っていることにあるのではないかと思います。農学部、工学部、医学部、薬学部といった、研究結果が社会の役に立つことが想像しやすい学部の研究はひとえに理学部での基礎研究をベースにしたものではないだろかと私は考えています。この世界の知識のベースを作る学部としてとても誇り高い学部であると私は考えています。

とまあたいそうなことを書いて少しばかり恥ずかしいですが、理学部に所属する人の特徴としてやはり勉強が好き、課題に向き合い解決したいという思いを持っているという特徴があるように思います。

高校までは周りの友達に気後れして勉強が好きだなんて言えなかった、という人が生き生きと勉強できる自由な場でもあるでしょう。そんな雰囲気の理学部が私は好きです。

東京大学理学部生物学科の魅力!

どんな生活?

大まかには、3年生は午前中は座学の授業、午後は学生実験、定期的に野外実習(山や海での現地調査)、4年生以上になると研究室に配属され、各々のテーマで研究という流れになります。

ここでは3年生のある一日の流れを紹介してみます。

   
8:30-10:151時限目「遺伝子機能学」この日は細胞分裂のS期に起こる、重要な機能について学習。
10:25-12:102時限目「動物生理学」この日は、神経伝達経路における、カルシウムイオンチャネルの作用についての講義。
12:10-13:00お昼休み3年生のみんなが集まる学生控え室で、午後の実験で何をするか確認しながらご飯を食べます。
13:00-18:00学生実験大腸菌のプラスミドに対しての遺伝子組み換え操作。程よい緊張感が実験室を包みます。
19:00-バイトに行く人もいれば、夜ご飯を食べる人、実験のレポートを書く人など様々です。

通常の授業、学生実験に加えて3年生前期ではすでに大学の臨海実験所を利用した6泊7日の実習、大学付属の植物園とその近くの山を利用した3泊4日の植物実習、富士山の高山地帯の植生を調査する3泊4日の実習などに行きました。

生にたくさん触れ、机上の空論ではなく実際の観察実験に基づいた生命現象の解明を行うという生物学基礎研究の基礎を学ぶことができます。

東大理学部生物学科の教授陣

どの教授も世界の生物学界の第一線で活躍されている方ばかりです。知識が本当に豊富で授業はとても楽しいし、我々学生にも的確にアドバイスをくださります。生物を勉強、研究する環境として大変恵まれていると思われます。

また、普段山や海などのフィールドに出向いて研究されている先生方も多く、そのような先生方は非常に体力があるという特徴もあります。山での実習などの時は先生方についていくのに結構必死です(笑)。生物学科は、そんな知力体力を兼ね備えたかっこいい先生方がたくさんいる魅力的な学科です!

東大理学部生物学科で勉強した先はどうなるの?

生物学科を卒業した学生のうち9割がたは大学院に進学しているという現状です。

残りの1割の人は本当に様々な業種で就職していきます。大学院を出た後は、博士課程に進んでもっと研究を続ける人、企業などに就職する人、あまり偏りなく分かれるのではないかと思われます。企業に就職する人の中では研究職につき、大学での学びを活かしたりもできるでしょう。また、博士課程に進むとさらに大学に残って研究を続け、ゆくゆくは教授まで登りつめる、なんて人もいるでしょう。

自分がどれだけ研究者に向いているか、実際に研究に携わってみて、時間をかけて考えなければわかりません。研究がどんなふうに面白いかも実際にやってみなければわかりません。かくいう私もまだまだ研究の域に足を踏み入れていないのでわからないのです。実践あるのみという印象です。

最後に

生物学に限らず、研究という分野は世間的にもなかなか厳しい職業であるというイメージは強いのではないでしょうか。かつて自分の中でも、研究費をとるのが難しい、薄給であるなど、どうしてもマイナスのイメージが先行していました。しかし、特に生物学科の先生たちをみてみると皆ロマンを追い求めながらスマートにかっこよく、かつ泥臭く研究をされている方々がおり、こう方々に世界の学問が支えられているのだなと思うと強い憧れの念が湧いてくるものです。

一度研究という世界をじっくりのぞいてみたい人、生物学にどっぷり浸かりたい人、少しでも生物に興味があるなと思う人はぜひ、理学部を検討してみて欲しいと思います!